「コミュニケーションミス」のお話 伝達率とシンクロ率

ちょっと大上段に構えてみましたが・・・まあ、要するにまたしてもグチなわけですな。
「コミュニケーションミス」をなくせって言っただろ!みたいな叱責を受けたことに対する、ちょっとした考察?自己弁護?そんな感じですよ、ええ。

二つの指標を導入です!

で、お題は「コミュニケーションミス」でございまして、それに対する傾向と対策、なんてのが、今回の流れ。傾向と対策だから、まず、コンサルらしく、いくつかのパターン分けを試みるわけでございます。
パターンわけをするには、指標を導入するのが効果的。っていうか、適当に指標を導入しても、それっぽく聞こえる、魔法の手段。今回は、「伝達率」ってのと、「シンクロ率」っていう二つの指標を導入してみっかな、なんて思います、はい。
伝達率というは、「伝えたい事象が過不足なく伝わったか」という指標。「シンクロ率」は、「伝わった事象を背景を含めて、情報の発信者および受信者が同じ理解を得たか」という指標。こう定義してみる。
で、コミュニケーションミスというは、この指標値のどちらか、もしくは両方が低い状態を言うのだ!!と、またしても大上段にふりかぶってみる。
伝達率が低ければ、シンクロ率は低くなる。そりゃそうだ。しかし、伝達率100%であっても、シンクロ率が低いっていう状態も、多分ある。そういう意味で、伝達率アップは、シンクロ率アップの必要条件ってやつだ。ということで、まずは、伝達率が低い状態の傾向と対策を見ていって、そのあと、シンクロ率が低い状態の傾向と対策を見ていくのがよかろう、そう思うわけですわ。

最初のパターン・・・対象としての認識ミス

最初は、伝達率0%の状態。
この状態は、そもそも情報を渡す相手、コミュニケーションをする相手を落っことしてしまった、という状態が相当しますなあ。
まあ、伝えてないんだから、コミュニケーションもへったくれもないわけで。本当に必要とされている人に情報が行かなかった、もしくは、必要とされる人ではない人に情報が行ってしまった、というパターンなわけで。
原因としては、最初に、コミュニケーションを行う人のリストアップが漏れていたり、リストアップした人に対して、どういう情報を渡すべきか、という、まあ、PIMBOKでいうところの、コミュニケーションプランの立案に失敗しとる、そんなことが考えられるわけですよ。
そうなると、このパターンのミスっていうのは、大体プロジェクトの初期段階に起こりやすい、ということになりますわ。はじめたころには、プロジェクト内の組織図ってのもふわふわだし、プロジェクトを進めていくうちに、「ヤツに話を通しておけば、間違いない」だとか、「アイツは話を通しておかないと、めんどくせ〜ことになるな、おい」みたいなことが、わかってくる。わかってくれば、「話を通し忘れた」みたいなことは、どんどん減ってくる。まあそうでしょう。
ということで、最初のコミュニケーションプランの立案と、プロジェクトを進めていくなかでの経験の積み重ねで、このパターンのミスは減らせるわけですな。

ふたつめのパターン・・・情報の質とその劣化

今度は、伝達率が低い状態。
伝達率が低い状態の原因としては、
・そもそも、伝えるべき内容が網羅されていない
・一旦伝わった内容が、忘れられていく
という、二つのパターンがありますな、きっと。情報の質にかかわるお話と、その情報の劣化という問題。
情報の質を高めるためには、正確に、もれなくダブりなく・・・いわゆる論理的思考で物事を伝えましょう、というのが、一般的なお話。集合場所を書き忘れた飲み会の案内とかが、典型的な例になるんではないかと。
情報の劣化ってのは、結局人は忘れるものだ、というところ。口頭でやり取りをしているときには、「こんな大事なこと、忘れるわけね〜よ」と思っているわけだが、あっさり忘れていく。自戒を含めて。なので、メモを取るとか、口頭ではなく、メールもしくは文章でやり取りをする、なんていうお話になっていく。
まあまあ、これも基本的なお話で、確かに、コミュニケーションミスっていうのは、ほぼこのパターンだったりする。そして、気をつけていれば、ある程度防げる。いや、実際、このパターンで起こるコミュニケーションミスで、ネチネチ言われるのは、まあ、仕方ないかな〜と、自分でも思うわけですよ。
しかし、しかし。次のパターンは、回避が非常に難しい。

みっつめのパターン・・・伝達度は高いがシンクロ率が低い

同じものを二人の人が見ているのだが、考えていることが違うっつうパターン。伝達度は間違いなく高いんだけれども、シンクロ率が低い状態。これが厳しい。つっか、こういうパターンとふたつめのパターンとの区別が出来ていない人が多い印象があるんだよね〜
ま、ちょっと例を。
たとえば。ある人の趣味というか趣向が、「プロレスがすきで、女子高生がすき」であったとする。で、この人が喜ぶ話相手を探してきて、というお話になったとする。
これ、「プロレスの話ができる女子高生」を連れてくれば、おkだね〜という話になるだろう、きっと。まあ、そんな子がどの程度いるかはわからないけど、これ一択なわけですよ、普通に考えれば。
しかしですね。「セーラー服を着たプロレスラー」をつれてきたら、いかがなもんでしょ?上記の条件にバッチリあってませんか?
確かに、この例は極端なんでございますが、じゃあ、「セーラー服を着たプロレスラー」の選択肢をはずすために、上記の条件に付け加えるとすると、つれてくるのは女子高生とします〜とか書くことになるわけですよ。普通書かないでしょ、こんなことは。これは、情報を出している私と、コレを読んでいるあなたに、「この人」というのはおそらく男性で、男性なら女子高生とお話したいに違いない、という前提があるので、書かなくてもいいわけなんですよ。
つまり、何が言いたいかというと、シンクロ率を高めるためには、両者が意識的もしくは無意識に持っている前提が揃っていることが必要、なわけです。揃っていれば、セーラー服を着たプロレスラーは出てこない。けど、もし、揃っていなければ?シンクロ率は低くなり、セーラー服を着たプロレスラーが出てくる可能性が高くなる。
そして、これは「伝えるべき内容が網羅されていない」という、ふたつめのパターンとは、明確に違うわけですよ。なぜかというと、すべての前提を情報として放り込むことは不可能だから。それは、上記のセーラー服を着たプロレスラーを回避するために、何を書けばよかったのだろう、というのを、事前に把握するのがほぼ不可能なことからもわかるわけで。
実際、ユーザさんと仕様調整をしていて、同じ話をしていると信じていたのに、前提がぜんぜんちがって、うおぉぉ!手戻りじゃ!!!と、なったことは結構多い。失敗は記憶に残るから、多く感じているだけかもしれないけれど。しかし、これ、ユーザさんから見れば、まさに、「セーラー服を着たプロレスラー」が出てきた状態そっくりなわけで。
で、それはなんで起こるかというと、こちらは、ユーザさんの会社にずっと勤めているわけではないので、その会社の文化とか、暗黙知とか、やっぱりわからないわけ。そうすると、知らず知らず、セーラー服を着たプロレスラーを出現させてしまうわけですな。
これに対する対応って、本当に難しい。前提の違いって、違いが明らかになるまで、両者に潜在的に存在し、決して表に出ることはないわけで。唯一できることは、一度その前提の違いが出たら、それに関連する前提の違いが他にはないかチェックすること。まあ、それも程度があって、完璧にはいかないけれども。

最後はグチで締めるのだ!

ということで、この手のコミュニケーションミスは、発生不可避と考えるほうが妥当だと私は思うわけで。だって、有効な手が打てないんだもの。
ところが、先にも書いたが、伝達率が低いのか、シンクロ率が低いのか、その区別がつかない人が多い印象がある。有効な手のあるなしという点で、海の深さほどの違いがあるのに。
その原因はなにか、というと、やっぱり、前提がそろっている状態で、仕事をする人のほうが世の中圧倒的に多くって、伝達率さえ高ければ、シンクロ率は自然に高くなるなためではないか、なんて分析してみる。
普通の会社勤めをしているときに、前提がそろっていない、つまりは文化が違う人と仕事をする機会って、そうそうあるもんじゃない。客先にバンバン出て行って仕事する、ITドカタやコンサル会社のほうが、全然特殊なわけで。
しかも、コンサル会社でも大手SIerでも、出世していくと、客先に出ることが少なくなるもんだから、周りが同じ前提で動く人ばかりになってくる。すると、この発生不可避のコミュニケーションミスが理解できなくなっていく。端的に言えば、現場感がなくなっていく。すると、伝達率とシンクロ率の違いなんて忘れていき、結果として・・・
「なんでコミュニケーションミスが起きるんだ!なくせと言ってるだろ!!」
とまあ、こんなお叱りを受けるハメになるわけで。やれやれ、ですわ。