IT業界におけるプロデューサー

なんだか、タイムリーにan_sap_parasiteさんからコメントをもらったのだが、
実は次のお題はプロデューサーにしよう、と、思っていたところであった。


ということで、ちょっとこの記事を参考にさせていただこう。
http://depeche.cocolog-nifty.com/knowledgeyield/2005/09/it_9621.html
「ITサービスに「鬼十則」を」


著者のdepecheさんには、一度洒落たコメントをいただいていたのだが、
トラックバックのお礼もしていないことに気づき、
お礼代わりということで、取り上げさせていただこうと思う。


この記事では、「電通鬼十則」なるものが紹介されている。
そして、IT業界との対比がされており、「サービス精神」の必要性について、
紹介をしておられるわけである。
ここでは、depecheさんもおっしゃっている、IT業界と電通との違いについて、
少し考察してみようと思う。
一言でくくれば、プロデューサーという役割の存在についてである。


電通マンの仕事は、「売ることが仕事」のいわゆる営業とは違い、
売ったあとの広告の製作、製作したもののユーザ承認、
厳密には代金の回収までを含めた、全工程についての責任を持っている、
と、聞いたことがある。*1
どちらかというとプロデューサーに近い形であると言え、
予算権限も、広告を実際に手がけるデザイナー会社の選定権限も全てもっているわけである。


この仕事のやり方は、非常に自由度が高いが、責任も大きいという、
典型的なハイリスクハイリターン型である。
翻って、一般的なIT業界の仕事はどうであるか?
一部コンサルティングファームおよびシンクタンクに、同じような業態を見ることができるが、
基本的には、営業・開発が分離した、機能別組織となっており、
営業は売上に、開発は原価に責任を持ち、プロデューサー的な人は存在しない。


これが、開発現場によるリスクヘッジ志向の原因であると、私は考えている。
「サービス精神」というヤツは、「サービスしたから、次もしくは今回、別のメリットあるよね」
というのが、前提になるもの、つまり、「未来の収益に対する先行投資」という
意味合いが強い性質のものだと思うのだ。
そうすると、原価だけに責任を持っている状態では、
サービスをしても、サービスをした本人に対するリターンは期待値ゼロである。
期待値ゼロでなにかしよう、というモチベーションが起こるのは、
愛とか宗教とか、とかく特殊な状態でしか起こらないものである。*2


そうなると、サービス精神を発揮してもらうためには、
売上責任と原価責任を両方持つ人材・・・プロデューサーの存在が
不可欠なのではないか、というのが、私の結論なのである。


an_sap_parasiteさんには見透かされてしまったが*3
私の志向は営業段階から開発、運用まで一貫でやっていくプロデューサーである。
ITコーディネータという資格は、一応そういうところを狙っているようだったので、
試験を受けてみた、という次第であった。


今のところ、プロデューサー制をとっているベンダーは少なく*4
その体制をとっている一部コンサルティングファームおよびシンクタンクでは、
本をバンバンだしてるような人が、その役割をやっているため、
現在のところは非常に狭き門の「プロデューサー」であるが、
私は、将来やってみたいと思っている。
IT業界全体が、機能別組織からプロデューサー制(電通のような広告業界のように)に
全面移行してくれると、サービス精神も現れるようになるだろうし、
私にとっても、仕事の間口が広がってうれしいんだけどな〜と思う
今日この頃である。

*1:むちゃくちゃ又聞きなので、違ってたらどなたかご指摘を

*2:愛は相手をつなぎとめるため、宗教は来世の安定を得るため、と考えると、愛も宗教も特殊パターンではないとも言える

*3:多分リアルな世界ではお会いしたことがないはずだが・・・

*4:製販一体体制を標榜するベンダーはかなりあるが、プロデューサー制とは違い、たとえばERPというソリューションの下に、営業・開発を一緒においておく状態を指すことが多い