コンサルさまの迷言

ITコーディネータってやつは、一応継続学習ってのが義務付けになっている。なので、ちょくちょく研修に出かけるわけだが、以前に遭遇した「コンサルさま」が、今日のお題なのである。


そのときの研修のテーマは、パッケージを選定、摘要するときのポイントみたいなお話であった。
まあ、日々自分がやっていることではあるのだけれど、所詮SAPのパッケージなんてのはでかい企業向けの話。中小向け、というお話でもあったので、少々期待をしながら行ってみたわけである。
結論から言えば、暗澹たる気分で帰路に着くことになってしまった。

なんだこれ??

いや、実際、初球からあぶないかな〜と思ったわけである。
自分の話は、コンサルを志向している人には評判がいい、と、その講師である「コンサルさま」は、最初に言い放ったわけである。


今まで、こういう前置きをした人で、まともなヤツは正直いなかった。
パターンとしては、めっちゃくちゃな話を基本する。ただ、単語単語はキャッチーなものをまぶし、業界裏話みたいな話も織り交ぜるので、話自体は面白く聞こえる。で、研修が終わった段階での評価を集めると、「無茶苦茶な話ばかりだった」と、「経験に基づく面白い話が聞けた」という二つに評価が分かれる。で、その講師は言い放つわけである。「コンサルに興味のない人には、面白くなかったんでしょう」
またこのパターンかな〜と思ったわけである。


で、まあ、この「コンサル様」、肩書きは立派なのである。
何十年もパッケージにかかわっている風な経歴に、どこぞの大学の講師という肩書きもついている、60以上になろうかというおじいさまなわけである。
なんなんだろ〜大丈夫かな〜、と思いながら、その研修が始まったわけで、結果としてはぜんぜん大丈夫じゃなかったわけだ。で、その内容のぶっとびかたも、かなりのレベルに達していた。


まず、全部の支払と全部の入金について、社長一人が決裁をしているようなワンマン経営の会社に、キャッシュフロー計算書を入れた、という話を嬉々として始めたのである。
キャッシュフロー計算書ってのは、結局は資金繰りの状況を見ましょう、という財務諸表である。で、中小の社長の仕事は資金繰りが中心と言ってもいい。じゃあ、キャッシュフロー計算書って必要じゃん、と、思いきや、そんなものはいらないのである。だって、キャッシュフロー計算書って、前期と今期を見比べて、現金が減った、増えた、って、そういう代物。社長に必要なのは、先々の資金見込みで、それは資金繰り表をきちんと作ることでやるわけだ。
つまり、絶対に必要のないものを、どいういう経緯かしらないが入れることになった話を、成功例みたいに話はじめたのである。ご丁寧に、「社長も経理担当もキャッシュフロー計算書のことは知らなかったので、会計知識の講習をやりました」という、かなり脱力系のコメントまでついていた。


そして、その企業での「実例」というのが、どんどん出てくる。
機能別組織の組織体になっているのに、「部門別P/Lと部門別B/Sを導入した」という話をしはじめた。なんじゃそりゃ、けどまあ、製造部から営業部への内部仕切価格を決めたのかなあ、それもまあ、古いやり方だなあ、と、思っているところに、内部仕切価格なんて、営業と製造の仲が悪くなるだけだ!!と、たたみかける「コンサルさま」。どんな「部門別P/Lと部門別B/S」が出来上がったのだろう??
さらに、稼働率は一定の前提で予算を作ったのだから、季節変動で売れない時期も商品は作るように指導した」と続く。そんなの、予算の立て方のほうがおかしいんじゃないの??


こんな指導をされた企業が気の毒でしかたない。


また、パッケージの導入の仕方、という、進め方の部分もあった。
企業の活動に対して、責任者と実際のシステムの機能、今回のパッケージで実現するのか、手作業でフォローするのか、ということをマッピングしていこう、という、それ自体は非常に妥当な進めかたを紹介し、じゃあ、ためしにやってみましょう、という話になった。
で、共通費の部門別配賦、という機能の部分に、私なんぞは当然責任者に経理部門を入れたのだが、模範解答にはなんて書いてあったか。
「システム自動処理のため、担当なし」
おいおい、業界に入って1年目2年目の若手が、そんなとぼけたことを言うのならまだご愛嬌だが、おっさんがそんなこと言っちゃ完全NGじゃね?出てくる数字に、コンピュータが責任を持つわけね〜じゃね〜か!!


そして、予想通り、業界裏話がちょいちょい出てくる。
そのチョイスは確かにすばらしく、面白い内容だ。
隣の受講生も、「コンサルさま」の話がいたく気に入ったようで、身を乗り出して聞いている。
ほんと、やれやれですわ。

ほんと、老害

ということで、まあこんなのが「ご高名なかた」であり、「コンサルさま」だったりするのである。
これじゃあ、「コンサルティング」という職業が、詐欺師同然の職業ですよね、と、言われても、「まあそうですね」と、答えるしかね〜な〜、と、暗澹たる気分で帰ることになったわけである。
私は研修費用を捨てたくらいですんだのだけれど、身を乗り出して聞いていた隣の受講生であるだとか、このおっさんが「指導」したっつう企業だとか、このおっさんが講師をしているという大学の生徒であるだとか、そういう人たちは、信じてしまう分だけ、二次被害をこうむっているわけである。
まさに、おあいにく様。そんな感じである。