ゲームをはじめよう

さて、プロジェクトマネジメントの話に戻ろう。


先日までの話の要点は以下である。


1.普通のやり方ではプロジェクトは必ず遅れる
→予想に対する早期完了の見込み違いは「よりよい仕事」のためになくなり、
 予想に対する遅延の見込み違いのみが顕在化する
2.「役割分担」が他者の仕事への無関心を生み、結果として遅延の連鎖を招く


それに対する解法は
1.役割分担はせず、タスクを分担する。
2.具体的には、日次で進捗を管理し、タスクが終わった人から次の仕事をやっていく
というやり方をする、ということであった。


それに対する拒否反応として、
1.結局「できる人」に仕事が集まり不公平になる
2.納期の意識が薄くなるのではないか
3.専門スキルが違う人が集まっているという現実を無視している
というものがあり、1.に関しては、どっちにしたってそうなるのだから、
先に手をうったほうが傷が浅くてすむ、というお話であった。


今回は2番目・納期の意識が薄くなるのではないか、という問題に対する検証である。
つまり、次に自分の仕事が控えているから、納期どおりにやろうとするのであって、
ほかの人がやってくれるような状況では、手を抜いてしまって、
スケジュールが遅れるのではないか、という懸念である。


これは、要するにモチベーションをどう保つか、という命題である。
つまり、だらだら仕事をやっても許される環境なら、確かにそうなってしまうだろう。
ということは、早く完了させる、というインセンティブが働くような仕掛けを考える必要がある。
どうするか。ゲームをはじめればいい。


一例をあげよう。
ポストイットに、タスクと標準的な工数を書いて、模造紙に張る。これを全部のタスクについて行う。
この時、クリティカルパスになっているものは、印をつけておく。
もう一枚模造紙を用意し、そこにはメンバーの名前を入れておき、
タスクを割り振るたびに、ポストイットを移動させる。


これでOKである。


今やっているタスク、今までにやったタスクの量が、これでわかる。
タスクの量を測定すれば、もっとやろうか、というゲームが始まる。
そうでなくても、どのくらい働いたのか一目でわかるから、意図的に完了を遅らそうものなら、一発でわかってしまう。
ちなみに、ひとつのタスクを複数の人間でやる場合には、ポストイットを2枚にすればいいし、
タスクにやり直しが発生したときには、おもむろにポストイットを追加する。
追加せずに、「ステータスを戻す」のは、仕事に対する達成感という観点から、やってはいけない。
さらに、クリティカルパスを明示することによって、スケジュールに対する貢献度もわかる、という仕掛けだ。


もうひとつコツをあげるとすると、タスクの工期はかなり挑戦的な工期を設定し、
各タスクの中で、バッファを作らないことである。
バッファは、まとめて最後に作っておけばいい。
例えば、大日程計画で40日のフェーズがあったとしよう。
クリティカルパスの工期を全部足して40日になるような計画を立てるのではなく、
35日になるように、意識的に工期を小さくし、共通のバッファとして5日を設定する。
そして、チームとして、このバッファを食いつぶさないようにする、
ということを、最低ラインの仕事として、全員で意識付けするのだ。
これは、副次的な作用として、「遅れ」が発生してから手をうつ通常の進捗管理に比べて、
「遅れそう」の段階で手が打てる、というメリットももっている。
まだ遅れてないけど、バッファがあと1日しかない、なんとかしよう、である。


さて、蛇足になるかもしれないが、最後の仕上げは、マネージャのポケットマネーである。
あるフェーズが終了したときに残っているバッファ日数によって、
チーム全体へのボーナスを設定すると、さらにゲームの要素が強くなる。
たとえば、フェーズのひとつが終了したときに飲み会を設定する。
基本的にはワリカンだが、マネージャの追加負担額を、日数x2000円に設定する、などなどである。


まあ、最後はやりすぎると、プロジェクトの完遂と引き換えに、とんでもない出費になるので、要注意だが・・・