ウェブ進化論 Google AdSenseとSAP ESAの比較

全国どころか中国まで足を伸ばし、あーだこーだとやっていたら、
ついに3月はまったく内容のないエントリをひとつ書いただけ、
という、非常に恥ずかしい状態になってしまった。
とはいえ、状況が変わったわけでもなく、
これからもしばらくは、単発更新になりそうである。


なんていう状況の中で、超遅ればせながら、
「WEB進化論」を読んだのである。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)


まあ、この本自体の書評は、私が書く必要はないと思う。
そもそもベストセラーだし、
Webをちょっと巡回すれば、この本の書評および
関連記事はたんまりある。
しかし、何かを書きたくなる、
そんなパワーを持った本であるのは確かである。


この本を読んで、私が一番うーん、と考え込んでしまったのは、
Google AdSenseのビジネスモデルと、SAPのESAとの類似点と相違点である。


双方とも、WEBサービスという技術基盤の上に、
サービスを作っているところは同じだ。
そして、程度の差はあるが、「多数の表現者」の存在を前提にしている。
Googleは、ブログをはじめとする「文章」の表現者が多数いて、
その表現者が書く文章に広告を出すことで、ビジネスを成り立たせている。
SAPのESAは、「ビジネスサービス」を公開している表現者が、
それなりに多数の表現者がいる世界を前提に、
「こんなに便利になるんですよ〜」という未来を提示しているわけである。


ずいぶん昔のエントリでは、価格マスタはメンテナンスしなくても
よくなるんじゃないか、なんてことを書いたが、
たとえば、物流系の配送会社および路線決定業務というのは、
まさに駅スパート感覚になる可能性を秘めている。
各物流会社が、自分のところの料金体系と、
現在の車の空き状況、到着予定日時などをWEBサービスとして公開すれば、
荷主側が出荷指示をかけるときに、最短なのはどこの会社、
もっとも安いのは、どこの会社のこのサービス、
というのが一発でわかるようになる。


こういうビジネスモデルを考えたときに、
実は急に分が悪くなるのが、
大きな固定費を抱えた、既存の物流業者である可能性が高いのも、
ブログ対メディアの図式に似ていて面白い。
一番小回りが利いて、固定費が安い業者は、
街中で、2トン車くらいの車を自分でころがしている人たちである。
一人でやっているから、仕事を安定的にとることができず、
大手の下請けをやっている、というパターンが多い層に、
このWEBサービスというヤツは、
定期的な仕事をもたらす可能性がある。
自分の稼動状況と現在位置を車載の端末から入力する。
その情報をWEBサービスとして公開してくれるサービスがあり、
それに対して、荷主側からBOOKINGがかかる、という仕掛けができてしまうと、
本社だ、管理部門だで膨れ上がってしまっている、
今まで仕事を配っていた大手は、急に身動きがとれなくなる、
そんな可能性が出てくるわけである。


ただ、決定的に違うのは、収益構造をどう考えるのか?という点である。
GoogleAdSenseは、広告主からの広告料を、
多数の表現者にばら撒いて、その上前をはねているわけである。
言い方を変えると、スポンサーと多数の表現者の間の、
お金の流れを抑えているので、収益を上げることができてるのだ。


しかし、基幹系システムはどうだろうか?
お金の流れを抑えようすると、やはりライセンスという形で
企業から対価をもらい、WEBサービスに「お墨付き」を与え、
お金の流れをコントロールする、ということになるだろうか。
しかし、このモデルは、せっかく基盤にWEBサービスを使っているのに、
非常に「閉じた」モデルに感じる。
そこがしっくりこないところである。
なんだか、ブログにメディアがお墨付きを与えるみたいな、
そんな逆行を感じてしまうし、それだったら、
別にSAPのプロダクトを使う必要ないんじゃないの?
と、考えてしまうわけである。


現在SAPのプロダクトでメシを食べている身にとっては、
ちょっとヤバい結論になってしまった。
まあ、くいっぱぐれそうになったら、何でもやりますけどね、私は。