スキルセット その4 階層間ギャップ
さてさて、前回までの話で、「星取表」ができているわけである。
縦軸に、
- 業務知識
- 業界知識
- モジュール知識
- プロジェクトに関する知識
- ベースラインスキル
をとり、横軸に
- ジュニアコンサル
- シニアコンサル
という感じの表が出来ていて、そこには、
到達すべき目標が書かれている。
目標に到達できたら「○」を入れていき、
全部のところが「○」になったら、
「ジュニアコンサル」「シニアコンサル」ですね〜
という話である。
この「星取表」の各項目に「○」をつけるために、
何をどの手順でやっていくのか、
というのが、「育成プラン」というわけである。
で、正直なところ、「育成プラン」と言ったところで、
金が出るわけでも、権限があるわけでもないから、
画期的ななにかができるわけではない。
愚直に、「座学」と「OJT(職務経歴)」を組み合わせてみましょう、
という話になるわけである。
まずは、スタートラインとして、どういう人を想定するか・・・
ウチは新卒は取らないから、2〜3年開発の経験のある人が、
コンサルを目指してみましょう、という想定にしてみよう。
ということで、星取表を見直してみる。
どこか、○がつくところがないかな〜というわけである。
すると・・・だ。
思いのほか、この開発者と「ジュニアコンサル」という間に、
大きなギャップがあることがわかる。
まず、必要とされる「視点」自体が、全然違う。
仕様書に基づいて、プログラムを納期までに組む、
という仕事で、○がつくところは、
プロジェクト知識の進捗管理部分と、
データベースの構造という観点からの
R/3のモジュール知識くらいだ。
まだ、SEで、概要設計をやっていました、
そのときに、お客さんと話をしました・・・
くらいだと、ベーススキルに○がつく。
しかし、そのくらいなのである。
開発の経験が何年あっても、他のところに○がつかないのだ。
これが、一から全部作りこむシステムの開発者だと、
DBの設計からなにから、全部するわけで、
少なくともSEを何年もやっていれば、
要件定義を通じて、業務知識というヤツはでてくるのである。
ところが、R/3の開発というのは、
ベースにどーんとR/3があって、
元からあるものを拡張しましょう、というスタイルである。
業務要件というのは、コンサル側の人々が決めてしまい、
「部品」になってから開発側に降りてくる。
業務の理解がなくっても、開発の仕事は完了できてしまう。
これは、短期的には、開発を仕事をしている人にとってはいいことである。
「業務のことはわかりませんよ」
と、言っておけば、リスクも仕事内容も限定できる。
ところが、どんどん「業務知識」からは遠くなっていくのである。
今はやりの「下流社会」的な言い方をしてみと・・・
「コンサル」と「開発」は、昔から階級としてあった。
しかし、その階層間は、「要件定義を通じた業務理解」という「橋」があった。
ところが、ERPという仕掛けは、
その「橋」を完全にコンサル側に取り込んでしまい、
結果として、階層間の断絶が大きくなってしまった。
開発をしている人が、コンサルやりたい、というと、
知識とスキルと経験がないからダメ、と、言われ、
コンサルの仕事のとっかかりがなくなるのだ。
うーん、困った、困った・・・
しかし、なにか他の「橋」のアイデアぐらいは出さないと、
「育成プラン」自体がさよ〜なら〜なのである。
次回は、そいつを考えてみようかなあ、と思う次第である。