たこふじ 「経営者のためのシステム」

さて、前回までで、「月末在庫締め方式」と「都度確定方式」の違いについて説明した。
で、「都度確定方式」のほうが、多少現場に泣いてもらっても、たこふじオーナーの私には
メリットがある、というところまで書いた。
今回は、具体的なメリットについてである。


一般的に、人は自分に興味のあることの最新情報をほしがる。


車に興味のある人なら、最新車種の情報収集に怠りはないだろうし、
コンピュータに興味のある人なら、最新機種の動向、場合によっては、インテルAMDが出している
ロードマップにも目を通し、今後の動きを注視するだろう。
ウチの嫁さんは、マンガの最新刊情報は欠かさずチェックし、ひいきの作家のものは、
発売日当日に、たいてい私の家に到着している。


では、たこふじオーナの私が興味のあることは?
当然「儲け」である。
都度確定方式の優れたところは、「儲け」をリアルタイムに近い形で提供してくれることだ。


月末在庫締め方式は、基本的に月末締めが終わらないと、原価が確定できず、
ある月の「儲け」は、次の月にならないとわからない。
ところが、都度確定方式だとどうか。
売上を上げたときの仕訳をもう一度書いてみよう。
 売上原価 2000円 / 在庫 2000円 5Kg ジャガイモ
 現金 3800円 / 売上 3800円 ジャガイモ
このデータなら、売上-売上原価で、1800円の儲けが発生したことがわかる。
これが大きなところだ。


もちろん、「原価」は、原料となるジャガイモだけではなく、光熱費なども当然あり、今計算されたのは、
いわゆる「限界利益」(固定費抜きの利益)である。
しかし、それさえわかれば、あといくらの「限界利益」が上がれば、固定費をカバーし、実際の利益が
発生するかどうかがわかるのである。
で、今月は出足が鈍いなあ、と、思えば、ちょっと自分で店頭にたち、お客の呼び込みをしたり、
期間限定の割引券の配布なんてのをやって、てこ入れをしたり、ということができる。


つまり、「素早い意思決定ができる」というのが、都度確定方式のもっとも大きいメリットである。
(まあ、「意思決定」が「的確である」ことが最も重要で、そう思うと、私が店頭に立って呼び込みをする、
という意思決定が的確かどうかというのは、はなはだ疑問ではあるが・・・)


もうひとつあげるならば、「不正」の防止に一役買ってくれることだ。
たとえば、実は見習いの焼き係が練習用にと、黙って小麦粉をくすねて持って帰っていたとする。
月次在庫確定方式の場合、このような不正を見抜くことは難しい。
たとえ30Kg入りの小麦粉の袋が1袋なくなっていたとしても、毎月の使用量から考えると、誤差の範囲になるかもしれない。


しかし、都度確定方式で、このような不正をするのはかなり難しい。
ある日突然、小麦粉の使用量が30kg入り一袋分増えていたら、誰しも不審に思うだろう。
そりゃ、一袋ではなく、わからないような少量をくすねることはできるかも知れないが、
不正をする人間から見た費用対効果というヤツは、激しく低下する。
つまり、かなり強力な抑止力となるわけである。


さて、上記のように二つほどメリットをあげてみたが・・・
両方とも。「コスト削減」というメリットではない、ということに気がついていただけただろうか。
要するに、経営者が「自分に興味のあることの最新情報」を取るために、R/3は導入されるのだ。
よく、「トータル運用コストの削減」という文言が踊っているが、
ことユーザオペレーションの世界でコスト効果が発生することはない、と、考えたほうがいい。


たとえば、日々Excelで、「実績資料」だけを作って暮らしている管理職を半減したとする。
(うーん、多少主観が入った表現である)
彼らが作っている資料のほとんどは、R/3が日々吐き出すリアルタイムの資料に変わるのだから、
まあ、それは可能である。
しかし、ポストというものは、当然単純には減らせない。
ポストがあるから、出世というモチベーションがあるのであって、それをなくすときには、
そのほかのモチベーション・・・成果主義の拡大によるモチベーションなど・・・が必要である。
かくして、ポストを減らしたときには、人事改革の成果になるのであって、
R/3導入の定量効果ではなくなるのだ。


あくまでもシステムを使って何をするか、が問題なのであって、システム自体が利益を生むわけではない。
ただ、R/3というものは、「何か」をしようとしたときには、非常に便利だというだけである。
上記の例では、「管理職の半減」という目標のためには、管理資料を効率よく提供するシステムが必要になる。
その用途としては、R/3というシステムは、非常に便利なのである。