こいつはヒドい記事ですなあ〜

今日のお題はこちらの記事である。
http://www.asahi.com/business/aera/TKY200607080590.html
突っ込みどころ満載でどこから話をしたものやら・・・というところだが。
まずは、ここらへんから突っ込んでみようか。

誰にとってメリットがある?そんなの企業側にきまってるだろ!!

この記事に注目すべき一文がある。

実際に、サラリーマン法人化の相談がいくつもSIPで進んでいる。持ちかけてくるのは、むしろ企業側だ。

そりゃそうだ。企業の最大のリスクは、「人を雇う」ことなのだから。それが解除しやすくなる「サラリーマン法人化」は、企業にとって一方的に有利な仕掛けなのである。
自分でフリーランスをやっていたときの感想だが、本当に怖くって人は雇えなかった。
何度面接をやったところで、一緒に働かないと本当に使えるヤツかどうかはわからない。さらに、雇った途端、長期休暇をされても、こちらは金を払い続けなければならない。だって、それが被雇用者の権利だから。だからこそ、それをリスクヘッジするために、ある程度の資本金を持ち、何人か雇って、一人二人がそうなっても大丈夫なような人員体制にする。そうすることが、会社として発展するための第一要件なのだ。
そもそもそういうリスクを会社が担保しなければならないから、会社全体の売り上げから見ると労働分配率は低く見えている、という、社会保障的な仕掛けが、日本の雇用体制には組み込まれているのである。
ところが、このサラリーマン法人化、さわやかにこの企業側のリスクをばっちり消してしまうわけである。業務請負になるわけだから、病気だろうが事故だろうが、「請負」ができなくなったら、一銭たりとも払う必要が無くなる。こんなハッピーな話なら、うぇるかむ!うぇるかむ!!なのである。

リスクを取るのは自由。だが、数字がおかしい

そういう観点で、記事の最後を見てみよう。
このケース、年収600万で雇用状態のときと、「サラリーマン法人」の状態を比べ、手取りが100万UPだ、という、かなり幸せそうに見えるシミュレーションをしている。
しかし、雇用状態と「サラリーマン法人」の状態とを比べるときに、会社がウラで負担している直接経費だけを持ち出し、節税効果とあわせて可処分所得100万円アップ、なんて数字の見せ方は、リスクをサラリーマン側に一方的に寄せているという、企業側が断然得なケースであることを明示せず、「みなさ〜ん、得ですよ〜」と言っているわけである。言葉は悪いが、「楽園ですよ〜」とだましを入れて、日本人を船でほかの国につれていってしまった某国のやりくちそっくりなんじゃないの、これ?という豪快さである。
当然、リスクを取る、取らないは個人の勝手。私もリスクを取って、フリーランスになった。ただ、雇用状態で年収600万の人は、「サラリーマン法人」になったら、すくなくとも年収800万程度は確保するべき。それでも会社側のメリットは大きいのだから。

そもそもの話・・・プロ級の年収600万なら転職したら?

さて、法人化を仮にすると、直面する最大の課題。それは「営業力」である。
取引先が今勤めている会社だけの場合、圧倒的にパワーバランスは会社側に傾く。契約更新のときに、一方的な内容を通告されても、そこしか働く場所がなければ、飲まざるを得ない。それを打破するためには、ほかの会社に売り込めるだけのスキルを自分で持っておく必要がある。
で、だ。
そのような「ほかの会社に売り込めるようなスキルを持っている」人が、そもそも年収600万なのかね?という話があったりするわけである。一番納得できないのはそこだ。
本当に「ほかの会社に売り込めるようなスキル」を持っていて、「年収600万」だったら、転職先を探したって、100万くらいの年収アップは見込めるんじゃなかろうか。そうじゃなかったら、「サラリーマン法人」になって得意先がひとつ、なんていう状況は、自分の首を絞めているとしか思えないのである。

まさか・・・これは罠か?

さて、最後になるが、サラリーマンがプロ意識を持つ、ということ自体には私は大賛成で、それを実践する手段としてのフリーランスや法人化は、別にいいんじゃないの、と思っている。だって、自分も以前そうだったし、これからもどこかのタイミングでまたそうなるかもしれない。
けど

「サラリーマンは気楽な稼業」であるわきゃない。給与はガラス張り、税金天引きのむしられっ放し。そんな「上客」にはうんざりしたと反乱を準備するゲリラがいる。作戦コードは、「リーマン法人化計画」だ。

なんつー、アジな紹介のされかたは、まっぴらごめんなのである。


しかし、常々「格差社会」とやらには、どちらかというとうぇるかむで、人様よりもリスクを取ってきたと自負する私が、「格差社会」を目の敵にしている朝日系の記事に、共産党ばりの噛み付き方をしてしまうとは・・・
ん?
これはもしや、罠なのでは??
この調子で逆洗脳され、「格差NO!!」とか一年後に言い出していたりして・・・


ではまた。