失敗学と内部統制

ダイジェスト 内部統制シリーズの途中ではあるが、
ひとつご紹介したい本が。

決定版 失敗学の法則 (文春文庫)

決定版 失敗学の法則 (文春文庫)

さて、この本は、畑村教授が提唱する「失敗学」のエッセンスと、
失敗事例を取り上げた本の文庫本なのだが、
内部統制のことを調べていくと、
これって、失敗学の実践そのものだ、
と、いう感想を、強く持つようになったのが、
この本を紹介しようと思った動機なのであった。


ためしに、金融庁素案の、「内部統制の要素」と、
この本の事例、記述の対比をしてみると・・・


・統制環境
「失敗を認知しようとする風土」と対比できる。
失敗を認知しようとしなければ、
リスクを分析しようにも、「リスク」と感じなくなってしまうわけである。


・リスクの評価と対応
失敗の原因を「要因」と「からくり」にわける、という手法そのもの。
リスクの評価は、「要因」がどの程度の頻度で起こり、
その結果がどのくらいのインパクトがあるか、という分析だし、
対応は、「からくり」をなくす、少なくする、というアプローチに他ならない。


・統制活動
手順を守りましょう、なんだけれども、
ちゃんと「これをやらないとこうなっちゃうんだよ」もしくは、
「こんなことしちゃうと、こんなことになっちゃうんだよ」という
知識啓蒙活動も、同時に必要なんだな、
という、当たり前のことに改めて気づく。


・情報と伝達
「情報の断絶が諸悪の根源」
情報が必要な人って誰なんだろう?
一見関係のない人にこそ有効な情報があり、
それが伝わっていないと、失敗の原因になる。


・モニタリング(監視活動)
「量の変化が質の変化をもたらす」
一旦決めたことが、量の変化だとか環境の変化で、
時代遅れになってしまう。
だからそれをちゃんとウォッチしましょう、ということ。


・IT(情報技術)の利用
うーん、これについては記述はないですなあ。


ダイジェスト 内部統制シリーズは、テキストを金融庁素案にしているので、
「やらなきゃお上に怒られる内部統制」である
財務報告の信頼性に関わる部分が中心になるが、
COSOのフレームワークなんていうのは、
本格的に失敗学との共通点が多いなあ、と感じるし、
本来の「内部統制」の意味は、失敗学の実践を通じて、

  • 業務の有効性及び効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令等の遵守
  • 資産の保全

を、実現しましょう、と、読み直してもいいんじゃないだろうか。、
というか、金融庁が言ってるから、じゃなくて、
失敗学を実践して、企業を健康体にしましょう、
という動機のほうが、より妥当なんじゃないかと思うのである。


著者の畑村教授は、内部統制のフレームワークを作る気はないのかなあ?