SOAが描く近未来 エンドユーザからみたメリットはあるのか

エンドユーザ側に、SOAのメリットは出るのだろうか?
システム構築の手法云々を離れたところで、である。


ちょっと考えてみたが、例えば、マスタ整備の観点では、
かなり楽になるのではないか、と、思う。、
特に、「購買単価マスタ」の更新は、現在よりかなり少なくなる、
特に、間接材と呼ばれる、アスクルだとか、カウネットだとかで
買うような品物に関しては、メンテナンスフリーになるのではないか、
と、予想するのである。


今、購買単価は、自社のシステムの単価マスタを、自社の人間がメンテナンスする。
このメンテナンスが正確であれば、モノの検収をベースに、金額も確定させてしまう
入庫基準請求書照合というヤツも運用に乗るわけである。
逆に、双方で考えている「単価」が違う場合には、月末に請求書がやってきたときに、
なんでこの値段なんだ!、と、すったもんだするわけである。
しかし、SOAの考え方を導入すると、自社にマスタを持つ必要はなくなる。
仕入先が持つWebサービスに、単価を問い合わせればいいのである。


もちろん、自社の品目コードと仕入先の品目コードとの変換は必要になるだろうが、
こと間接材というヤツは、自社では品目コードを取らずに
購買するケースがほとんどである。
そうなると、例えば自社システムに対して、アスクルのカタログを見ながら
発注伝票を打つと、自動でアスクルに価格を問い合わせ、
その価格が張り付いた発注伝票ができあがる。*1
自動でアスクルに発注もするし、自社の発注伝票としてもできあがり、
納入された段階で、買掛金として計上してしまう。
こんな感じのことができるわけである。
そもそも「アスクルのカタログを見る」の部分も、
アスクルWebサービスとして公開してくれれば、
Webカタログを選ぶ行為も、プロセス制御の中に入れることができる。
つまり、自社の品目マスタを検索するのと同じ感覚で、
他社のマスタを検索し、品目と価格を決定できるわけである。


今のERP2004というやつが、上記のようなことができるような単位で、
サービスを定義しているかどうか、私は知らない。
残念ながら、実機をまだ触っていないからである。
ただ、もし、発注行為を一つのサービスとして捕らえ、
マスタの検索もその内部に入れてしまっていると、
カタログの部分を外部のオプションサービスとして使う、
という発想は、実現不可能になるわけで、
そこまで分解できることが、「性のいいシステム」ということになりそうである。


このセンでの応用としては、モノを出荷するときの運賃を、
工場の住所と送り先の住所を運送会社のWebサービスに問い合わせ、決定する、
ということもできそうである。


運賃というヤツはマスタ化が非常に難しい。
和歌山県ならいくら、だとか、住所を元にマスタ化するのは、とても難しいのだ。
同じ都道府県でも、「郡部」はちょっと違いますよ〜なんてのは
結構よくある話なのだが、住所を元に、そこが「郡部」かどうかなんてのは、
一律決定できるわけではない。
じゃあ、出荷先ごとにマスタ化するか、となると数が多くなるし、
ワンタイムの出荷先はどうするのか、など、難題が多い。
勢い、自社でのマスタ化は大抵の場合あきらめ、この部分だけは
運送会社から請求書が来た段階で計上しましょう、という話になる。
そうすると、特に利幅の薄い商品に関しては、月中での実績把握という観点で、
無視できない差異が発生する原因になるのである。


ところが、当然運送会社のほうでは、住所から運賃を決定しているわけだから、
これを、Webサービスとして公開してもらえば、自動で運賃の取得が可能である。
月末の運賃計上という業務が、リスト上でのつき合わせに置き換わるわけで、
業務負荷軽減という観点では、かなりいい感じではないだろうか。
お?そもそも当月の請求額と明細も、Webサービスで取得できれば、
アンマッチリストを自動で作成することもできる。
それなら、エンドユーザのやることは、アンマッチリストを確認するだけ。
運賃だけではなくて、すべての仕入れをこのやり方にできそうである。
うんうん、いい感じじゃない?これ。


まあ、これ、業界別VANと、実は思想は一緒である。
ただ、業界別VANと比較すると、構築コストは
かなり低くなるのではないか、と、思うのである。
フォーマットを決めたら、誰かがディレクトリサービスをやる。
各会社は、フォーマットどおりのXMLを返す部分を「作る」。
業界別VANは、各社個別システムの時代であり、
この部分は必ず「作る」必要があったが、
パッケージ全盛の現代にあっては、基本サービスに付け加えるオプションとして
「買ってくる」、という手が使える可能性が高いわけである。


逆に、このようなことをするたに、SOA以上に有利なやり方ってやつが
あるのだろうか。
もし私が知らないだけで、より有利なやり方がありますよ〜
という話なら、SOAは、「そんな話もあったね〜踊らされたヤツも多くってさ〜」
というネタになっていくのだろうが・・・
無理やり締めると、SOAの目指す方向性は、開発手法を飛び越えて、
エンドユーザにメリットをもたらすという一点で、
間違っていないと私は考えるのである。

*1:念のためにコメントしておくと、一例であって、アスクルに思い入れがあるわけではない