SOAが描く近未来 その2 システム構築

さて、今回はSOA時代のシステム構築である。
これを考えるにあたって、先に定義した
「基本サービス」と「オプションサービス」は、
社外のWebサービスとしてすでに存在し、
「基本サービス」と「オプションサービス」は、
インターフェイス項目としても足並みがそろっていて、
プロセス制御をベースとした接続に関する技術的な課題はクリアしている、
という状況を想定してみる。


この状況で、企業の「システムを作る」手順は、
1.基本サービスを選択する。
2.オプションサービスを選択する。
3.それをつなげるプロセス制御の部分を作製する。
以上、3ステップで流れの構築は出来上がる。
後は、基本サービスにのっとった形で、
自社の組織および品目・取引先などのマスタを
マッピングおよび整備すれば・・・
ふむふむ。理屈では動いてしまいますなあ。


上記の議論では、「基本サービス」も「オプションサービス」も、
自社のサーバではなく、必要都度接続して使う社外のWebサービスとして存在しても、
セキュリティさえクリアすれば、なんの問題もない。
使うたびに課金される、という点ではASPに似たモデルになりそうである。
もちろん、自社で開発して抱え込んでもいいが、
その部分は相当小さくなることが予想される。
「よくある機能」は、もはや開発されず、
どこかのサービスを使用することで代替されるわけである。


では、自社に残る部分はなにか、ということになる。
まずは、モデリングした業務をサービスのつながりとしてあらわすプロセス制御の部分。
あとは、品目・取引先などのマスタである。
組織定義も、広い意味でのマスタと考えられる。
そして、エンドユーザが実際に使う画面。
これも、一つ一つの画面は、「サービス」になるだろうが、
画面の配置や、プロセス制御に基づく画面の遷移の結果を表示させる、
という意味では、必要になる機能である。


そのほかには・・・そのほかには・・・
ぬ?ぬ??ぬ???
自社で「オプションサービス」を作りこまないかぎり、
これで打ち止め?もしかして??


以上のような考察をした上で、NetWeaverの基本機能の資料をもう一度見てみる。
う〜む、なるほど。
なんでポータルだとかプロセス制御だとかマスタだとか、
一見なんの関係もない機能を詰め込んであるんだ?と不思議だったのだが、
要するに、SOA時代でも「顧客企業に残る部分」を
網羅した設計になっていたわけである。


うーむ。
ここまで考えてみて、やっとこNetWeaverというヤツの本性、
もっと言うと、SAP社の思い切りがわかってきた。


考えてみると、
1.基本サービスを選択する。
2.オプションサービスを選択する。
3.それをつなげるプロセス制御の部分を作製する。
という手順は、ERPパッケージの世界においては、
顧客企業がERPパッケージ「買ってきて」、
それを「コンサルタント」が「カスタマイズ」することで実現していたわけである。
そして、そのERPパッケージにログインする人数ベースのライセンスを売って、
パッケージベンダーは収益を上げている。
その他のSIer(SAP社も含めて)は、「カスタマイズ」をすることで、
コンサルタントフィー」とう名目で、収益を上げている。
ところが、SOAというヤツは、「ERPパッケージを買ってくる」という行為自体が
無用な行為であり、ベストプラクティスはパッケージの中ではなく、
Webの世界に転がっている、という世界観を提示する。
そこには当然、「カスタマイズ」は存在さえしない。
つまり、今までのERPパッケージベンダーおよび関連SIerの収益構造を
全面的に破壊するパワーを、SOAというヤツは持っていたのだ。


既存のERPパッケージ会社は、SOA自体を否定し、既存の収益構造を守るか、
SOA時代の新しい収益源を模索するか、二者択一の選択を迫られ、
そして、シェアNo.1のSAPは、既存の収益構造を長期的に保持することはできない、
という結論に達し、SOA時代の新しい収益源を模索するために、
NetWeaverという仕掛けを世に出した、ということなのだろう、きっと。
いやー、思い切ったことするなあ〜


まてまてまて。
じゃあ、今SAP社をはじめ、各所にいる「カスタマイズ」の知識を
業務(メシの種)にしている人は、一体どうなるんだ?
いやいやいや、他人のことを心配している場合ではないぞ。
「カスタマイズ」の知識をメシの種にしているのは、
今の私もまったく一緒ではないか。
ということは・・・
時代遅れの技能しか持ちえず、再就職もままならず、住宅ローンに押しつぶされ、
債権放棄するハメになってしまい、一家離散、ホームレスとして細々生きる、
それが、SOAが描く私の近未来の姿???
・・・怖いなあ、これ。やっぱりSOAきらい。


ということで、最後は「SOA時代のシステム構築」という題からは
はかけ離れた内容になってしまった。
次回に続くのである。