RFPの功罪

ふうむ、少し更新が滞ってしまった。
月次の締めをやってみたら、かなり激しいトラブルが発生し、とても時間がとれなかったりしたためである。
しかも、誰かのせいにしたいのに、何を隠そう、私の確認漏れだったりしたわけである。
しかし、誰も「お前のせいだ」って言ってこないなあ・・・普通はあってしかるべきなのに。
ほかのところで得点を稼いでいるおかげだろーか?
一日でリカバリかけて、実質業務はとまらなかったからか?
それとも人徳っつうやつか?


まあ、それがひと段落したところで、今度はプライムベンダーからの依頼で提案書作りをやっている。
ユーザ企業から出てくるRFPに対する提案書作りである。
昨今は、このRFPの認知度があがって、ある意味「ブーム」になっている


ただ、このRFPというヤツ、教科書ベースでは必ず作ることになっているのだが、
それをうけとるベンダー側の評判は、結構悪い。
「んなモノがあるから、無駄な仕事が増えるんだよ!!」
という反応である。
まー、それも仕方ないから、というところである。


RFPとはなんぞや、というと、ユーザ側がベンダーに出す「こんなの作りたいんだけど」資料である。
それに対して、それぞれのベンダーが見積書を持ってきて決める、という手順である。
で、RFPを作る前段には、「業務改革プロジェクト」だとか「経営戦略プロジェクト」なんてのがあって、
それを実現するためのシステムはなんぞや、という視点から、RFPは作る、というのが、教科書的な
RFPの位置づけおよび作成手順である。
私の二つ目の肩書きである、ITC補のテスト勉強をしても、そういうことになっていたわけである。


で、そいつがなんでベンダーに評判が悪いか、というと、「ただ働きが増える」からで、
なんでただ働きが増える、という感想になるか、というと、二つの要因があるように思う。
1.RFPにベンダーが慣れていない
2.RFPにユーザが慣れていない


RFPにベンダーが慣れていない、というのは、端的に言うと、コンペっていう経験を大手ベンダーは
あまりしてこなかった、という事情によるものである。
仕様ってやつは、仕事をもらってから作るものであって、RFPに対して頭をひねってシステム構築提案なんてのは、
ただ働きじゃないか、という雰囲気を、仕事をしていてひしひしと感じるのである。


まあ、今までのシステム構築を考えるとそれも納得な感じではある。
基本的に、ハコを売ったところがソフトも作るわけで、ソフト開発のみの入札っていうのは、官公庁ぐらい。
しかも、ソフト開発部分や要件定義部分は1円だとかで札いれておいて、ハコか保守で回収という仕掛けである。
昨今では官公庁の入札に関しては批判が激しいので、1円なんていうのはなくなったと思っていたら、
どう考えても10人月はかかる要件分析に、9800円で札を入れた大手ベンダーがあった、という話を聞いたことがある。
(と、いっても5年ほど前だが・・・)


要するに、「提案の中身」以外のところで仕事が決まっていた時代が長かったから、「提案」を作るのが
どうにも苦手である、というのが、一つ目のお話なのだ。


で、二つ目のRFPにユーザが慣れていない、というほうだが、要するにRFPはユーザだけでは作れないのである。
システム要件を提示しましょうっていったって、システムのことなんかわかんないよ、
というユーザのほうがそりゃ多いわけである。
また、RFPをやっとこ作ってベンダーに渡したところで、帰ってくる答えが専門用語ばっかだったら、
やっぱりわからないのである。


じゃあ、どうするか、というと、いわゆるコンサルティング・ファームにお金を出してRFPを作ってもらう、
とう手段をとるわけである。
ところが、このコンサルティング・ファームは、今や開発からフリーハンドの会社はほとんどないのだ。
旧4大会計事務所系コンサルファームは、自前で開発部隊を持っているか、ITベンダーに吸収されるか、いずれかの道をたどった。
つまり、コンサルファームが作るRFPに応札するのも、そのコンサルファームなのである。
ほかのベンダーに声はかかるが、んなもんできレースになるに決まっている、と、ほかのベンダーは思うし、
ユーザ側にも、「これはできレースだ」と、判断するスキルはおそらくない。
結局「今までやってもらっていた皆さんが、一番よくわかってますよね」になる確率が高いわけである。
もし、ほかのベンダーになったとしたら、そこまでの分析がそもそもなってないから、
ユーザが不信感を持った結果、という確率も高い。
ということは、それを受けて仕事をするベンダーのリスクはさらに高くなる。
はてはて・・・である。


まあ、ベンダーのマネージャさんにとってみれば迷惑な話なのかもしれないが、
しかし、考えようによっては、「入札」できる機会が増えることは、大きな進歩なんじゃないか、と、私は思う。
少なくとも、まともな提案だったら仮に失注しても。落札した会社がヘタ打ては、話がくることも十分考えられる。
機会の均等は保障されていないが、機会の増加は保障されているわけである。


また、個人としてはこのRFPブーム、非常に歓迎なのである。
大抵、このRFPには、コンサルファームがやった「分析報告」のサマリーがくっついている。
これが宝の山ってやつなのである。
該当企業から見える「景色」、引いては業界の実態がそこから読み取ることができる。
そーすると、当然その業界に「強くなる」わけである。
自分がやらなくとも、その業界のことをサマリーしてくれた資料が読めるなんて、
ほかの仕事しててはなかなかない話で、「ケース研修」なんて行った日には、100万200万簡単に飛んでいくわけである。
それがタダ、場合によってはベンダーさんから「営業補助」の名目でお金もらいながらできるわけである。
うーん、おいしい仕事である。


ということで、
「え〜、そんなお金にならない仕事、勘弁してくださいよ〜」
と、口ではいいながら、いそいそと手伝いをする今日この頃である。
このくらいの二枚舌は、許してもらってもかまわないだろう。