ネタバレ注意 disってやる!!Battle Shp ヤマト

いや、ひどい。本当にひどい。
これをいい映画だ、と、本当に思っている人がいる、涙する人がいる、という事実に、心底から驚いてしまう。人はそれぞれ、と、いうわけなんだろうけれど、同じモノを見て、ここまで印象が違うというのは、戦慄を覚えるわけですよ。

思うにその違いは、ストーリーの矛盾だとか、安直なところが気になるかどうか、という点にかかってくるんじゃなかろうか。素直な心を持つ人は、派手な戦闘シーンとか、CGとかで「おお〜」となり、三文芝居の特攻連打で涙するんだろうなあ・・・

しかししかし、素直な心を捨ててしまった、あらふぉーの私にとっては、ストーリーがいけてなければ、どんなCGにも興ざめなわけで。
ということで、ストーリーが破綻しているヤマトを、こんなオレでも、全力でヤマトをdisってやるぜ!という回にしてみるわけであった。
(以下ネタばれ注意)

破ってはいけないお約束

SFの宇宙船ってヤツは、かっこよくしようと思うと、やっぱり実際の軍艦とかをモチーフにするのが定番だったりする。ガンダムもそうだし、マクロスとかもそうだ。

で、ここでひとつ、お約束が存在する。
宇宙空間は3次元なのに、船の下部の防御が絶対的に薄い、もしくはない、という事実を無視して、船のデザインはされなければならんのである。
本当に船の下部からの攻撃まで想定した戦艦をデザインすると、どうしようもなくかっこ悪いものしかできないので、これは、もう、本当にお約束としかいいようがない。
で、このお約束を見ている人に意識させてはいけない、というのも、やはりお約束。
思い出してほしい。船の下部を写した戦闘シーンがいままであっただろうか?アングルは、上斜め45度前後から真横のものばかりではなかったか?

そう、下からの攻撃に対する防御がない、ということを意識させないために、戦艦の戦闘シーンをロングアングルで撮るときには、上斜め45度から、よくて30度までに限定する必要があるのだ。もう、これは、見ている人をしらけさせないための、絶対のお約束といっていい。「下から攻めりゃいきゃいいんじゃね?」は、見終わってからの突っ込みトークであり、見ている間に冷静にさせ、この事実を気づかせてはイカんのである。

ところがところが。このお約束を、完全に無視しやがったのだ、このヤマトは!

その無視したエピソードが、第三艦橋が破壊されるところなのだが、まあ、要するに、下からなんだかペンチのでっかいのみたいのが現れて、第三艦橋を鷲掴みにする。んでもって、それが爆弾っていう設定で、第三艦橋をきりはなさないと、ヤマトが危ない!!という状況なわけである。
当然、下からのアングルでその様を見せるわけで、そこにはなんの対空防御もない、のっぺりとした下部が現れる。全部ここから攻めればいいよね、というのが丸分かり。

しかも、その前後がとんでもなくひどい。
このエピソードの前に、安藤君というサブキャラが一瞬出てくる。本当に一瞬、なんの脈略もなく、どこでなんの知り合いかも明示されず、キムタク扮する古代進の旧知の人間という設定で出てくる。そして、巨大ペンチが第三艦橋を鷲掴みにした際、古代進に、第三艦橋にいる安藤君に向けて「必ず助ける」というコメントを言わせる。が、爆弾につかまっているわけなので、気休め。そんでもって、ヤマトの外にいる黒木メイサ扮する森雪に、第三艦橋をミサイルで切り離せ、と、命令する。で、ミサイルどーんで、無重力状態にもかかわらず、第三艦橋は下に少し落ちていき、でっかいペンチごと爆発する。

心のきれいな人は、その前にあった、古代進の兄、古代守が沖田艦長を逃がすために盾になり、古代進が沖田艦長を「見殺しにしやがって!」となじる、というエピソードを思い出し、おお〜古代よ、お前も沖田艦長と同じ罪を背負ったんだな〜、うんうん、わかるよ、その気持ち〜と、涙するところであろうが、すれた私はそうはいかない。
もう、定番破りをした上に、さっさと爆発すればいいのに、爆発まで時間のかかる巨大ペンチを投入し、ないはずの重力があるみたいな見せかたをしないとつじつまが合わなくなるシーンを織り込み、さらにさらに、なんの必然もなく殺されてしまった安藤君という最強コンボ。映画館で笑いをこらえるのに必死になってしまうわけなのである。

しかし、さすがヤマト。これだけでは終わらない。
ここで、古代進と森雪のラブシーンをかぶせてくるのだ!「ひどい命令をしてすまなかった」「仲間を撃ってまった〜」んで、キスシーン。
うお〜、安藤君は古代と森がキスするために殺されちまうのか〜、もはや、新春かくし芸のパロディドラマなみの展開。
しかししかし!これだけでは許してくれないのだ、われらがヤマトは!!
さらなる衝撃はエンディング。なんと、森雪を「おかあさん」と呼ぶ子供が出てくるのだ!
い?い?い?キスシーンのあと暗転したけど、艦長代理がヤマトのなかで、森雪相手にやっちゃったってこと?そんなパロディAV真っ青の設定でいいのか??二人がやっちゃうために、安藤君は犠牲になったというのか???
答えろ!答えるんだ古代!!!

支離滅裂な真田・斉藤特攻

今回のヤマト、ガミラスの設定はちょっとワクワクした。「一部が全部であり、全部が一部である」水晶のような生命体なのである。各戦闘機だったり、戦艦だったりには、この「一部が全部であり、全部が一部である」水晶のような生命体が細かく憑依のような状態で乗っており、それぞれが独立して動くが、相互は瞬時に意思疎通できる、という設定である。

この設定は野心的だ。特に2時間という映画の尺の中で描くには、とんでもないハードルの高さだ。

なんでかっていうと、ガミラスを倒す、という状況を作り出すのに、これほど難しい設定はない。例えば、原作のように、デスラーが総統であるガミラスであるならば、上層部の連中をまとめてドカン、と、波動砲でやってしまえば、あとは烏合の衆なので、組織だった行動ができず瓦解する、というシナリオが書ける。しかし、「全部が一部であり、一部が全部である」生命体であるならば、この「上層部」という概念が存在しないため、いわばガミラスの全人口を極端に減らさないと瓦解しないわけだ。ガミラスを倒すためには、殲滅戦が必須の設定なのである。

しかし、ヤマトはその設定が出現するまで、基本的にガミラスの攻撃を避けて進んでいる。相当数のガミラス戦力を、地球とイスカンダルの間に残したまま進んでいるように見えるわけである。
その点で、この設定をどうやってつじつまを合わせ、持って行くのか?これは、脚本と監督の力量がとんでもなく高くないと・・・どうするんだろう。そうワクワクしたのである。

ところが。やはり我がヤマトは、私の想像のはるか斜め上を行く大技に出たのだ。

スターシアに会うために、ガミラス本星の洞窟に突入したヤマト一行。首尾よくスターシアにあったその帰り道、なんの必然性もなく突入部隊に入っていた柳葉扮する真田さんが、唐突にこう言い出すのである。
「まて!エネルギーの集まり具合からみると、ここがガミラスの中心だ!!」
「この中心を破壊すれば、地球への攻撃はとまる!!」

え??
今、何をおっしゃいましたか???

そう、この真田さんの、ガミラスの設定を根本から覆すこのセリフだけで、「どうするんだろう」という私のワクワク感を、まさに波動砲なみの破壊力で、我がヤマトは粉砕したのである!
これは笑うところなんだろう、きっと。ほれ、キムタクよ、笑いやすいように、「ちょっと、真田さん、そんな話、これっぽっちもなかったじゃないですか」もしくは、「そんなのしたら、今までの設定ぶちこわしじゃないですか」と、突っ込むのだ!!
と、思っているところに、古代と森は帰らせるのに、斉藤を特攻の道連れに指名。どんだけジャイアン設定なの?真田さん!!

もちろんこれは、原作白色彗星編に出てくる、白色彗星内の動力源爆破作戦における、真田・斉藤特攻を下敷きにしている。きっと、心のきれいな人は、斉藤が握り締める母からもらったお守りを見て、感涙するんだろう。名セリフである、「あわてず、急いで、正確に!」も、斉藤立ち往生も、忠実に再現だ!
あれ?再現って・・・これ、バラエティのパロディドラマでしたっけ??

そうか・・・そうだったんだ。これは、コメディなのだ!壮大なパロディ映画なのだ!!
進行が突っ込みなしの、ボケ連打で行われるという、高度なテクニックを使った、コメディだったのだ!そう思うと、合点がいく。100人いたら、1人か2人笑えばよし、それが本当に面白いネタなんだ!!わからないヤツは泣けばいいし、きょとんとしたまま、映画館を出ればいい。disりたければdisればいい。それがオレの生き方だ!!そういう魂の叫びが聞こえてきたぞ、ヤマトよ!!!

しかし、この高度なコメディセンスが、海外に受入られるかどうか・・・そこが問題だな、うん。