いまさらながらプロトタイプ

パッケージ導入をやっていれば、避けては通れないプロトタイプ。今回は、今さらながら、プロトタイプの話でもしてみようか、と、思う次第。



これも今さら。プロトタイプとは

プロトタイプっていうのは、一通り動くまでパッケージの設定をして、お客さんに見せること。
大抵の導入方法論では、プロトタイプを作って、お客さんに見せて、そのフィードバックを受け、設定の修正をして、場合によっては追加開発をするモノを追加、決定する、なんてことになってます。


そのメリットは、教科書的なお話だと、お客さんに完成形をプロジェクトの早い段階から見せることで、最終的なシステムのイメージを持ってもらい、ウォーターフォール開発にありがちな、出来上がってみたら、思っていたのと全然ちがうやんけ!というのを防ぐ、なんてのが効用としてあがっとります。



ちょっとした違和感

で、ですね。今回久々に提案活動のお手伝いなんてのをして、作業プラン作成なんてのをやってみたわけですよ。パッケージ導入の提案なので、当然プロトタイプの実施、なんてワークアイテムがあるわけですな。


私は期間から見て、プロトタイプは1回やって、その後は、お客さんが気にしたところに絞って、個別機能ベースで4回くらいのセッションをやる、みたいな計画を作ったんですよ。
それを、プライムベンダーのマネージャに見せたところ、以下の会話になったわけですよ。


「プロトタイプ1回で大丈夫かな」
「?スケジュールから考えると、1回とちょっとってとこですよ」
「いや、本来なら何回必要か、ということを考えたいんだよね」
「本来?」
「当然回数を増やせば、品質は上がるわけでしょ。一般的な品質を担保するには、何回必要か、ということが知りたいんだよね。スケジュールから1回半っていうのは、それはそれでわかるんだけど、どんなリスクがあるのか知っとく必要があるんだよ」


うーん、この論法、やっぱり違和感があるんですよ、私には。



プロトタイプは回数を増やすほどリスクが高くなる

実際問題として、プロトタイプは回数を増やせば、完成するシステムの品質が上がるってのは、ちょっと違う、そう私は思っているわけです。


まあ、「品質」の定義にもよるんですがね、「品質」ってのが、バグが少ないこと、という定義であるならば、プロトタイプで品質が上がることはない。だって、標準機能はそもそも「動く」のであり、考えうる限り、品質はいいわけですよ。業務フローがきちんと出来ていれば、動かないはずはない。


じゃあ、なんのためにプロトタイプをするか、というと、エンドユーザの代表の皆さんの変な幻想を打ち砕き、「パッケージってこんなもんですよ」という紹介をし、納得をしてもらうプロセスだ、と、私は思っているわけです。


前提としているのは、トップダウンでの導入ですよ、もちろん。できるだけ、追加開発はしないでおきましょう、という大方針が出ている前提。これがなく、パッケージ入れるのに、エンドユーザの皆さんの言うことを全部聞いていたら、できるものもできなくなる。だから、「80点くらいはいけてるんじゃないですかね〜」ということを、納得してもらうプロセスが、プロトタイプなんだと、そいう思うわけです。
もちろん、どうしようもないところは出てくるだろうから、それは、追加開発のリストにいれますよ、もちろん。しかし、それは、ある程度事前に分かっておかないといけないとも思うわけです。業務フローを作ったときに分からないようじゃ、お金もらってる価値はないなあ、なんて。


ちょっと話が脱線したわけですが、じゃあ、このプロトタイプの回数を増やすとどうなるか。
迷いが出るわけです、プロトタイプに入ってもらう、エンドユーザの代表の皆さんに。
やっぱり、これじゃ使えないんじゃないかな〜、帳票のレイアウトをきちんとしないと、xxさんから噛み付かれるんじゃないかな〜
やっぱり、こういう迷いが出るんですね。そうすると、追加開発のリストが増える。追加開発は、最後には審査会なんてのをやって、スクリーニングをかけるんですが、それでも残るわけです。全体が大きければ、「これを切ったから、こっちは残そう」なんていう、出し引きの世界は必ず現れますから。


つまり、プロトタイプの回数を増やすと、品質は上がらず、追加開発というリスクが増えていく。そういうものだ、と。


その証拠に、というと語弊があるんですが、初期のASAPというSAPの導入方法論、プロトタイプというステップがないんですよ。とっとと設定して、とっとと動かしてしまえ!動くんだから!!という、かなりの原理主義方法論ですな。今はどうか知らないんですが、セレモニーすらやらないっていうのは、さすがの私も、かなり違和感を覚えたもんです。



お前、何様

で、この考え方から行くと、プロトタイプは「セレモニー」なので、一連のセレモニーをやるスケジュールを組んでおけばOK。基本的に、1回だ!というのが、私の論法だったりするんですが・・・


ただ、この論法、「要件を確定させるのがプロトタイプで、回数を増やせば、要件はより厳密に確定するので、品質が上がる」っていう論法に比べれば、はるかに違和感があるんだろうな〜、やっぱりそう思うわけですよ。まあ、客観的には「お前、何様だ!」って感じですわね、実際。


ただねえ、パッケージ導入って、本質的に「お前、何様だ!」っていう行為だと思うんですよ。なので、これからも「お前、何様!」で、生きていこうと思います、はい。